FEATURE-VOL.017

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FEATURE

PHOTO 田尻光久

先日、『筋膜クレンジングテクニック メルトメソッド』(医道の日本社刊)が発売しました。出版を記念して、監訳者の中村格子先生に今全世界で大ブームのメルトメソッドの魅力と活用法をお話しいただきました。

スポーツドクター中村格子先生に聴く!

日本初上陸のセルフケア

「筋膜クレンジングテクニック メルトメソッド」の魅力とは?

 

 

筋膜の水分不足を改善する
スポンジに水を含ませるような繊細な動きが特徴

 

 

――――――数々のセルフケアやエクササイズに精通されている中村先生ですが、メルトメソッドのどのような点がおもしろい、特徴的だと思いましたか?

 

メルトに惹かれた点は、とにかく「やさしい動き」で「気持ちが良い」ことです。日本人は「痛いからこそ、良く効いている」と思いがちです。しかし、メルトの場合は、心地良い動きで、快適さだけが残ります。「痛みに敏感な方にも勧められるトリートメント」だと強く感じました。

 

同じように筋膜にアプローチをする筋膜リリースだと、人によっては刺激が大きすぎて、痛みが生じることもあります。対してメルトは、筋膜に新鮮な水分を流し込むことが目的で、動きはとても小さいです。ゴリゴリと無理に圧迫したりせず、「スポンジに水を含ませるような繊細な動き」で身体を整えるところが素晴らしいと思います。

 

また、本文を読み進めていくと著者のスーさんはご自身もフィットネスのプロですが、身体を動かすことや感じる事が私と同じように大好きなんだと伝わってきて、とても親近感がわきました。セルフケアやエクササイズは、「やってみないとわからない・体感してみて初めて納得すること」が多くあります。スーさんは体性感覚がとても優れていて、理論だけではなく実際に「身体のこの部分をこう動かすと、上手く調整できる」と理解したうえで、メルトの動きを開発しています。私も身体を動かすときに、いつも微細な感覚を意識しているので、メルトの動きをしていると「そうそう、この感じ! スーさんはわかってるな〜この変化をちゃんと認識しているんだ!」と心から感じます。

 

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彼女は大変勉強家で、それゆえにメルトはとてもよく考えられたメソッドです。
文中にも、鍼、指圧、経絡、アナトミートレイン、リフレクソロジー、ロルフィング®、クラニオセイクラル、ニューロマスキュラーセラピーなどの言葉が出てきますが、温故知新とでもいいましょうか、受け継がれてきた考え方を大切にして、基本に忠実な理論と動きでまとめているのです。
「わかる人には、わかる」のがメルトメソッドです。
一般の方には少し難しいかもしれませんが、治療家やボディーワーカーなど、専門家が読むとまさにツボにはまり、「本当に良くまとまっているな」と感じるのではないでしょうか。

 

――――――メルトメソッドでは、「痛みや不調の原因には、筋膜の水分不足が隠されている」と言われています。「筋膜の水分不足」や、「ストレスのつまり(Stuck Stress)」が影響している症状にはどんなものがありますか。

 

滑走性が悪い患者さんを診察していると、筋膜の水分不足を感じます。
また、筋膜内の流れの滞りが心身に影響を及ぼしていると感じることもあります。
例えば、自律神経や更年期の影響で、身体がガチガチに硬くなったり、心が不安定になっている状態です。神経系やホルモンのバランスが崩れて身体が硬くなっているのか、身体が硬くなっているからメンタルにまで影響が出ているのか、どちらが先かはわかりませんが、こういった不調も体内の流れが滞ったことが一つの原因ではないか、と考えられます。

 

本書の中で解説されている「筋膜内の流動システム」や「ストレスのつまり」は、東洋医学の「気」に近いものだと思います。
私も自分の経験から健康には「体内の流れをつまらせないことがとても大切である」と強く感じています。

 

人間の身体は、手術などで手が加えられると、流れがせき止められてしまうことがあります。体内の流れが滞ると、不調や痛みが発生します。
この状態は手術を受けた患者さんご自身も体感していると思いますし、止まった流れを回復することはとても難しいです。
手術をするのは簡単です。しかし、手術をせずに身体を治すことができれば、さらなる痛みを防ぐことができます。これまでやまほど手術を経験してきたからこそ、「メスを入れる前に痛みを防ぐ手段が必要」だと多くの人に伝えていきたいです。

 

 

計算して開発されたローラーやポールも
メルトの魅力のひとつ

 

――――――中村先生は昨年、ニューヨークのメルトレッスンにも参加されましたが、実際にメルトを体験してみていかがでしたか?

 

ニューヨークでのメルトのレッスンは短い時間だったので、もっと学びたいと思いました。その日は、ソフトローラー、ソフトボール両方を使って下半身のリバランス・レングスのシークエンスを行いました。
レッスンはとてもアットホームな雰囲気で、「みんな継続して頻繁に通ってるんだな」という印象を受けましたね。授業前、私がレッスン初体験だとわかると、常連の受講生が「これを使うのよ」と言ってファームのスモールボールを持ってきてくれたりしました。ただ、インストラクターに「何言ってるの、今日はそれは使わないわよ」と指摘されていましたけど(笑)。
事前に原書やDVDで学習してから参加しましたが、実際のレッスンでは「少し違うな」と思うポイントもあったりしたので、また受講したいですね。

 

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昨年7月、中村先生が参加した早朝7時からのメルトレッスンの様子

 

本の中でのお勧めは「手のセルフケア」です。一番衝撃的だったのが、シークエンス前後のアセスメント(自己評価)で、ボールを握った感じと握力が改善したことです。「やっぱり効くんだ!」と思いました。
毎日の診察で手が本当に疲れていて……特に注射の打ち過ぎで関節がすごく痛かったんです。昔からハンドボールやテニス、ピアノをしていて、「いつも手が疲れているなぁ」という印象はあったのですが、メルトで一気に疲れがとれました。
「誰かにマッサージしてもらわないと無理!」と思っていたので、効果が嬉しくてみんなに勧めたくなりました。メルトのソフトボールは、一見よくありそうなグッズに見えますが、この硬さは他にはありません。
ボールの色やデザインもすごくかわいくて気に入ってるんです。ちょっとカバンに忍ばせて旅行に持って行ったり……飛行機の中でもできると思います。
みなさんひとり1セット、持って欲しいです!

 

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メルトのグッズという点では、ローラーもよく考えて作られているなと感心しました。本書にも、ローラーの開発秘話が随所で述べられていますが、この柔らかさと直径は非常に計算されていますよね。
市販のローラーで行うと痛みが出るような部位でも、ここまで柔軟性があればやさしくトリートメントが行えます。直径もかなり細いので、70代、80代の方や女性でも安心してできます。
私も最初は市販品のローラーを使っていましたが、メルトのローラーでシークエンスを行うと効果が全く違ったので、ぜひ試してみてほしいです。

 

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「こんなに曲がるんですよ!」と、ローラーの柔軟性を披露する中村先生

 

 

「筋膜ブーム」とは一線を画したメルトメソッドを
セルフケアの新スタンダードに

 

――――――メルトメソッドは1日10分のトリートメントを継続して行うよう推奨していますが、セルフケアを毎日続けるコツはありますか? また、メルトメソッドと並行して続けたほうが良い習慣があれば教えてください。

 

メルトの場合、苦しいトレーニングではなく、「気持ち良い」と感じる動きなので、自然と続くと思います。さらに前後にアセスメントがあって効果をその場で体感できるので、続けるモチベーションになります。
シークエンスを全部やろうとすると大変なので、自分の好きな動きだけでも良いですよ。1日のタイムスケジュールの中に、メルトを組み込んでみてください。

 

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メルトと合わせて、おすすめしたいのは「毎日鏡で自分の身体を見る」、「定期的にウエストや足の太さを測って確認する」などのアセスメント習慣ですね。
私は、毎日鏡に後姿を映して「体が歪んでいないか」、「垂れているところがないか」しっかりチェックしています。また、親指をウエストに置いたときに指がつくかどうか、手で円を作って足がちゃんと通るかどうか、ボディサイズの自己評価もしてます。指が付かなかったり、足が通らなかったら、それは「太った」ということですよね。滅多に体重計には乗りませんが、こうしたアセスメントを怠らなかったおかげで、20代の頃からボディサイズが変わっていません。
身体の変化は毎日確認し、少しずつ修正することが大切です。自分で見張っていると身体もやすやすと太れないし、歪めないですから(笑)。
「メルトではオートパイロットを使って身体の歪みを評価する」「鏡を使って視覚で評価する」「実際にサイズを測って評価する」。この3つを組み合わせれば「気づいたらいつのまにか身体が老け込んでいた!」なんてことは避けられますと思います。

 

――――――日本初上陸のメルトメソッドですが、先生はこれからどんな人に実践してほしいですか?

 

メルトは痛みや不調がある人をはじめ、あらゆる人に実践していただきたいです。肩甲骨周りのシークエンスは、パソコンやスマートフォンで猫背になりがちな現代人にとても有効ですし、骨盤のタック&ティルト(骨盤調整)は産後の女性にもお勧めです。

 

「痛みはあるけれど多分一時的なものだから、すぐに治るわ」と考えている人にも、メルトを試してほしいですね。
スーさんは本書で「急性痛」と「急に出た慢性痛」は全く異なるものであると述べています。「急に出た慢性痛」とは、一見急性痛に見えても、ちょっとした動作をきっかけに元々あった痛みの原因が表面化したという状態です。「急に出た慢性痛」の場合、対処療法をしたとしても、しばらくすると再び痛みを繰り返してしまいます。もし「急に出た慢性痛」だった場合、メルトが痛みの再発を防いでくれるかも知れません。

 

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シンプルな動きでだれでも簡単に行うことができる反面、メルトの理論はとても奥が深いです。そのため、書籍自体は専門家向けです。まずは専門家の方々が本書を読んでメソッドを理解してほしいです。

 

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すでにフォームローラーを取り入れているボディーワーカーや、ピラティス、ヨガの指導者にとっては、手札を増やすヒントにもなると思います。
当院のスタッフにもよく「リハビリやトレーニングの後に、患者さんが身体の変化を実感できるように“オチ”をつけなさい」と言っていますが、患者さん本人に「なるほど!」と効果をわかってもらえなければ意味がありません。実際に効果をわからせてあげるのは、一つのサービスでもあります。
そういった点で、メルトのアセスメントはとても参考になると思います。

 

ただ、単なる「筋膜ブーム」というスタンスでメルトを捉えてほしくありません。正しくメソッドを理解した専門家を通して、広めていきたいです。

 

毎日患者さんの身体を見ていて、「身体を整えてあげたい」と思っていても、言葉で表しづらいことがたくさんあると思います。「ここをこうすれば身体が整う! 不調が改善する!」とわかっていても、それを理論立てて説明することはとても難しいです。
私は、メルトメソッドを読んで「地球の裏側で私と同じように考えている人がいて、この考えを、言葉で、とてもわかりやすく表現している」と感じました。
同じような感覚を持つ専門家の方が本書を読めば、きっとスーさん、そしてメルトメソッドに共感してくれるだろうと思っています。

 

――――――ありがとうございました!

 

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<書籍情報>
筋膜クレンジングテクニック メルトメソッド

 

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https://www.amazon.co.jp/dp/4752990296

 

「メルトメソッド」は、筋膜に潤いを与えることで痛みやコリを取り払い、自律神経を整えるという最新のセルフケア法。痛みを「溶かす」効果とMyofacial(筋膜)・Enelgetic(エネルギー)・Length(伸張)・Technic(テクニック)の頭文字とから「メルト」と名付けられ、現在世界で数十万人が実践している。

 

ISBN:978-4-7529-9029-1
著者 : Sue Hitzmann
監訳 : 中村格子(整形外科医・医学博士・スポーツドクター)
仕様 : B5判 340頁
定価 本体2,700 円+税