FEATURE-VOL.016

FEATURE-VOL.016

FEATURE

Photo:川島一郎(camp.LLC)

NHK大河ドラマ「龍馬伝」の題字をはじめとした書はもちろん、絵画、彫刻など多様な作品を発表し続ける書家の紫舟さん。健康の維持に、そして創作に鍼灸治療が一役買っているとのこと。そんな紫舟さんに、健康や美についてお話をうかがいました。

作品制作の役立っている鍼灸

 

 

――以前、紫舟さんのブログで、鍼灸院に時々通っていらっしゃると知りました。鍼灸治療を受けられたきっかけは何だったのでしょうか。

 

 

鍼に通い出してから、3年ほどになります。通い始めた当時は、とても疲れていました。体質的に疲れが溜まると、咳が止まらなくなります。ひどいときは咳が2カ月も続くこともありました。そういうことが年に何度かあり、3年前の時は特にひどくて高熱まで出ました。

 

 

この症状は癖になり、当たり前に、受け入れるようになっていました。もちろん対策のために、マッサージに行ったり、ストレッチに行ったり、いろいろなことを試していました。それでも、なかなか疲れが取りきれなくて……。

 

 

知り合いの方から鍼灸院に行ってみたらどうかと勧められ、それまで鍼を受けたこともなく、痛みにも弱いので少し怖かったのですが、「この疲れは自分の力で回復できないだろうな」「誰かに外注して取ってもらうしかない」と思い切って行ってみました。

 

 

仕事柄、眼精疲労になりやすいので眼の周り、頭に血が上りすぎて頭皮が硬くなっているということで頭にも鍼をしましょうと、先生に言われたときは怖かったですね(笑)。ただ、1回目の治療を受けたあとに、とても楽になったことが実感できたので、恐怖心と戦いながらがんばって通いました。当時は月に6回、半年間は通院し、体質が変わりましたね。今でも月に1、2回は治療を受けています。

 

 

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――やはり身体の中に直接作用している感じがよかったのでしょうか。

 

 

そうですね、身体の表面的な疲れではなく、深いところに凝り固まった疲れがあったと思います。それを取り除いてくださったんだと思います。

また自分自身の身体への関心が高くなりました。当時は身体が冷えていたり、浮腫んでいたことが普通だと思っていましたが、どうもそうではないらしいと。もっと快適な状態があると知りました。

 

 

――今はどのような治療を受けているんですか。

 

 

書くことは肩を使うので、肩関節の可動域が広がる治療や、腱鞘炎や眼精疲労の予防など、特に不調がなくても予防のために治療を受けています。また季節に応じて、例えば梅雨の時期であれば浮腫み予防などもしていただいています。

 

 

――鍼灸によって、書のパフォーマンスが向上したと実感することはありますか。

 

 

私は子どもの頃から、外に遊びに行って、帰ってきて玄関で靴を脱いで、そのまま玄関に倒れて寝てしまう子でした。毎日すべてのエネルギーを使い果たして終えるタイプ。大人になってもエネルギーの使い方を変えることはできなくて、全エネルギーを使い作品を制作し、終わると倒れていました。鍼灸と出会ってからは、全エネルギーを投入しても、ダウンすることが減りました。

 

 

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紫舟さんの書「夢」

 

 

 

 

――それは、とても大きな変化ですね! 普段の生活のなかで、健康について意識されることはありますか。

 

 

昨年はミラノ国際博覧会2015や2年連続でルーブル美術館Carrousel du Louvreで展示を行いまして、ここ最近は海外へ行くことが多く、それこそすべてを出し尽くすような活動をしてきました。ですので、今年はエネルギーをチャージしながら活動を進めようと決めました。今年の前半は国内での仕事に注力しながら、余裕を持とうと。

 

 

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2015年、フランスのルーブル美術館地下で展示した作品「喰うカラス 喰われるカラス」。立体化した書などに光を当て、それによってできる影をも含めて作品が完成する

 

 

 

 

余裕を勘違いし食べ過ぎてしまったり、運動してもそれ以上のエネルギーを欲してしまったり……。これまでの人生の最重量体重は思春期でしたが、今年の6月にそのときの体重に追いついてしまいました(笑)。
まず「水をたくさん飲みましょう」というアドバイスをいただいたので、その日のうちに水を2リットル飲みました。それから、意識して水分を摂るようにし、食事も不摂生をしないように気をつけ、6日間で2.2kgも落ちました。

 

 

――食べ物へのこだわりはどうでしょうか。

 

 

口の中に入れるもので身体ができているので、意識して食生活を見直すようになりました。

家で烏骨鶏を飼っているのでその卵と、鶏たちが食べているのと同じお庭で採れた無農薬野菜を食べています。野菜が無農薬ですので、卵も抗生物質など入っていない純粋なものです。無農薬の食品って見つけるのが、大変なんですよね。

 

 

――紫舟さんにとっての「健康的な生活」とは、どんなものをイメージされていますか?

 

 

昔からずっと、自分の生活のリズムとパターンは崩さないということは心がけています。特に寝る時間は変えないようにしています。
それでも、寝ても疲れが取れないときがあります。右手と眼、脳をよく使うので、疲れ方のバランスがよくないですよね。使う箇所がほとんど上半身に集中しています。そこで、手や眼、脳を疲れさせるのと同じくらい、身体全体を疲れさせて、疲れ方のバランスを取るようにしています。そうすることで、よりよく眠れるようになりました。

 

 

最近意識しているのは、足の指先に意識して力を入れることと肩甲骨を動かすストレッチです。私は踵でしか踏ん張っていなかったようで、鍼灸の先生からもトレーナーの方からも、指摘を受けました。それによって姿勢も崩れますし、身体全体にも影響がでますよね。今は、地面をつかむよう足の指先に力を入れるようにしています。

 

 

肩甲骨をしっかり出すストレッチも、朝起きたら必ず行っています。肩甲骨が動き始めると、脇周りや腕周りの余計な肉が効率よく取れていくそうですね。部分痩せを狙っています(笑)。

 

 

 

 

 

 

本当によいものは見飽きることがない

 

 

――紫舟さんにとって「美」とはなんでしょうか。

 

 

職業柄、美しいものを見たいということに、気持ちが向きすぎかもしれませんが、「美」というのは、「バランス感覚でしょうか、不安定の中の絶妙な安定をなんとか保っている」様子です。

 

 

――ご自身の作品とのかかわりでは、どうでしょうか。

 

 

彫刻や絵など、書以外の作品をつくるときに意識しているのは、「自分の部屋に飾るならどうするだろう」ということです。その作品と今日も、明日も、3年後も10年後も一緒に暮らすとしたら、本当にこれでよいのだろうかという基準でものをつくっています。

「よいもの」というのは、「長持ち」します。「本物」はパワーを放ち続けます。「本当によいもの」は見飽きることがないんですよね。

 

 

書には数百種類と書いた中から一つ選ぶ作業があります、そのときに頼りになるのが、美意識というのでしょうか「眼」の力なのです。書家になりたての頃から、京都・奈良に通い、奈良では実際に生活もし、本物の「和」を見るということを継続しています。例えば、人間国宝の方のもとを尋ね、その作品を見せていただいたり、一流の眼を持った人が、有名、無名を問わずに集めたコレクションを見せていただいたりしています。さらに、そういった匠と呼ばれる方々と一緒にものをつくらせていただいています。そうすることで、「眼」を育てることを継続しています。

 

 

――そういう基準で見たときに、「美しい人」とはどのような人なのでしょうか。

 

 

情熱を傾けがんばっている人はみな、キラキラと輝いていますね。例え、うまくいっても、いかなくても、泥だらけになっていても、美しいと思いますね。

 

 

よく駅前でギターケースを開いて、音楽を奏でていらっしゃる方たちがいますよね。そんな人たちを見かけるたびに、素敵だなと思います。OL時代は自分が何にも情熱を傾けられずに、そういった人たちを憧れるだけでした。駅前での演奏は、ファン以外に向けても音楽を聞かせることになるわけです。野次を飛ばされることもあるでしょうし、あるいは褒められることもあります。いろいろな人からの評価を、すべて引き受けなければならない。それは、とてつもない勇気と、情熱だと思います。かっこいいです。

 

 

 

 

 

 

新作は「かっこいい」!

 

 

――今後の展望はいかがでしょうか。

 

 

紙に書いた書から始まって、これまでも彫刻や絵、彫刻を置いてできる影を投影して一つの絵が完成するといった、今までのアートの文脈になかった作品を生みだすことができました。今はもう一歩先に進んだ表現に取り組んでいます。そこに日本の文化や思想性を込めて、世界に発信していくことが役目だと思っています。

今取り組んでいる作品は、かなり!? 「新作」です! それをぜひ見てもらいたいです。

 

 

――それは今までの作品とはかなり違うもの、ということでしょうか。

 

 

全く違います。まさに「美しい」と思っています。
一つは、「透明の、立体の、書」です。これは屋外の日本庭園に展示するものです。もう一つ、屋内に展示する作品として、「書のキュビズム」があります。キュビズムは一点透視図法を否定し、さまざまな角度から見た像を平面に同時に描く手法ですが、これを書に応用し、まるで宙に書をドローイングしたようなものができました。平面作品ではなく立体なので360度鑑賞可です。正面から見ると文字に見え、横から見ると複雑な線の集合体です、とても「かっこいい」のです。

 

 

「かっこいい」は、私のなかで最上級の褒め言葉だそうです、知り合いに言われたのですが、私は物事を評価するときに、複雑な言葉を用いて表現するときには高評価ではないらしく、「かっこいい」と一言でおえる際は最上級に褒めているそうです(笑)。

 

 

――どのような作品になるのか、きっと想像を超えたものになりそうですね。楽しみにしております。本日はありがとうございました。

 

 

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【紫舟さんの今後の展示情報】

 

 

東アジア文化都市2016奈良市 古都祝奈良(ことほぐなら)―時空を超えたアートの祭典

東大寺では中国の蔡國強氏、元興寺では韓国のキム・スージャ氏、そして春日大社・今西家書院では紫舟さんが展示します。

「依然発展途上・成長途中ですが、私を育てた奈良への恩返し。展覧会は、大量新作でのぞみます」

 

 

1.重要文化財「今西家書院」― 言ノ葉は、光と影を抱く

[期間]9/3-10/23 10:00-16:00 ※月・9/18・10/2休館

[場所]今西家書院(奈良市福智院町24-3 0742-23-2256) ※文化財施設への入館料有
[作品]書のキュビズム(360度鑑賞可能な書)5点、自然と一体化した光の書 15点前後、書 1点、書の彫刻 2点、他
http://www.e-sisyu.com/exhibitions/narashihigashiajiabunkatoshi_kotohogunara_jikuwokoetaatonosaiten_imanishike

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2.世界遺産「春日大社 着到殿」―まだ かみさまが いたるところにいたころの ものがたり

[期間]9/3-10/23 9月6:00-18:00、10月6:30-17:00
[場所]春日大社 着到殿(奈良市春日野町160 0742-22-7788) ※入場無料
[作品]書を触れると、その書にかくれていた沢山のものたちがアニメーションに変化し登場。鑑賞者参加型の作品です!
http://www.e-sisyu.com/exhibitions/narashihigashiajiabunkatoshi_kotohogunara_jikuwokoetaatonosaiten_kasugataisha

 

 

詳細・お問い合わせ:http://culturecity-nara.com/

 

 

 

 

Love Letter Project ’16

11年を迎える書の文化活動は、今年も恵比寿ガーデンプレイス「ザ・ガーデンルーム」で行います。大切な人を想いながら大きな和紙(約1m)にことばを綴り自分の手で書くワークショップに、新作の展示、そして紫舟のギャラリートークを開催します。

 

 

1.作品展示

書・画・彫刻の新作に加え、紫舟+チームラボの最高傑作が集結。5年間新たな表現を加えつづけた世界に評価された作品をお披露目します。

[期間]10/8-10/10 10:00~19:00 入場無料
[作品]大きく成長したメディアアート、7mの新作屏風×2点、彫刻ほか!
 http://www.e-sisyu.com/exhibitions/loveletterproject16

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2.ワークショップ

今年はお子様に力を入れます! 想いを伝えるには、綴る言葉に加え、「文字」も力になります。紫舟さんが大切にし自ら主宰するワークショップは、年に1度ここだけの開催。文字が情報から表現に変化していくその手順は、紫舟の創作そのものを体感いただけます。

[日時]10/8 10:30-12:10 10/9 10:30-12:10
[参加費]3,000円(定員各40名)
[お申込み]https://www.dpcity.com/forms/ygp/1610ws/

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3.紫舟ギャラリートーク
制作秘話や発想方法や生み出し方などお話しします。
[日時]10/10 13:30-14:10 入場無料(定員150名、先着順)

 

詳細・お問い合わせ:http://www.standard-works.com/LLP/

 

 

JAL新千歳空港国内線ラウンジ内での展示
インタビュー内で触れている「書のキュビズム」など、紫舟さんの新作を公開中です。
[会期]2016年6月29日(水)より約1年間(終了日時未定)
[場所]新千歳空港JAL国内線のダイヤモンド・プレミアラウンジならびにサクララウンジ

 

 

紫舟さん公式ホームページ http://www.e-sisyu.com/